生物統計ヲタつみちゃん

統計など問わず語り

ICH E17を読む:2.2.4 評価項目の選択

いくつかの疾患領域では、医薬品開発のための臨床試験で適切なエンドポイントについて、FDA・EMAでガイダンスが整備されており、そういう場合にはガイダンスに従っておけば概ね問題にはなりません。

 

ただ最近は疾患も細分化・拡大していて、開発計画を規制当局と協議するたびにエンドポイントについても合意を取る必要があります。

 

ただ、これまでみたいな「血液検査しとけばOK」みたいな評価項目ならともかく、医師の判断が必要な疾患、国際的に診断にゆらぎがあり得る疾患だと、議論は難しくなりそうです。

 

ちなみに日本ではあまりそういうガイドラインは制定されていませんね…

 

ICH E17を読む:2.2.3 検証的臨床試験で使用する投与量の選択

申請者として恐れるのは、というか強引にでも避けたいのは「地域によって最適な用量・レジメンが異なること」なのですが、それは「そうあってほしい」と願うだけではだめなので、

  • 治療が想定される地域でのPK/PDデータ収集
  • 開発早期段階での国際共同治験

をICHは推奨しています。特に民族差の所在がよくわからない場合には(検証的な)国際共同治験に参加予定の地域でのPK試験の実施を推奨しています。また、早期試験での遺伝情報収集も、曝露に影響を及ぼす可能性が高いので推奨していますね。

 

PPKなどのモデルベースの統計解析手法で曝露に影響を及ぼす要因を特定することも有用としています。

 

…といったことを、規制当局と相談しながら進めるわけですが、用量設定は本当に難しいんですよね。失敗する開発プロジェクトはこの段階で問題を起こす、というより「振り返ればここが問題だった」になりやすい。

 

PKについて「民族差がよくわかっている」ケースはあまりなく、「まあばらつきの範囲内で概ね似てるよね」としてフェーズが進みます。実際PPK解析を実施しても「明確な地域差」がみられるケースはほとんどありません。

 

ただね~、それはいわゆる頻度論の回帰モデル的なアプローチ(PPKも)だからそうなっているだけで、ベイズ流の定量化を適用すればちょっと違った見方もできるのでは、と思います。そうなればもめごとも増えるとは思いますが…。

勤め先がオフィスに来いと言うので

先週金曜日に久々出社です。

 

まあ、疲れましたね。運動不足解消には出社はよいと思います。

 

「対面で仕事するメリット」、まああるんでしょうね。私も同意する部分はあるのですが、すべての仕事のうち、100ある中でどれだけそのメリットを享受できるのか、という話ですよね。

 

でもあまり「対面のメリットとは?」の説明が多くなく、納得感は薄いです。数値目標(稼働日の…割出社)というのも、いかにもコンサル出身のKPI的発想でなんだかね…。

 

まあ宮仕えなので言うことは聞きます、生活もあるので。最大限のメリットは「やってる感の演出」「気分転換」「運動不足緩和」ですかね。あ、それは「出社のメリット」か。

ICH E17を読む:2.2.2 被験者の選択

1つの臨床試験なんだから、各地域で背景にばらつきがあったとしても、組み入れる被験者は可能な限り均質にしてほしい。

 

はい分かりました、としか返事できないですね。

 

何だ簡単な話じゃないか、ということには当然ならず、例えば「年齢=60歳」といえばどの国でも計算ロジックは同じ、地域で違いが生じることは(年齢については)ないのですが、例えば「ある検査キットが地域によっては未承認」「診断基準が微妙に地域間で違う」ということはよくある話で、特に希少疾患なんかだとこれを調整するのは難しい。

 

まあ「あまり組み入れ基準を縛り過ぎない」という落としどころになるのかな…。

仕事はうまく行かないもの

特に自分以外の人がメインで動く場合はね。

 

どうもそういうのがこれまでは(あるいは今も)イライラの素で、それは「自分ならうまくやれるのに」「あなたその分野の専門家でしょ?」みたいに思ってしまう。

 

でもよく考えれば、自分でもうまくできるかどうかわからないことは多いし、専門家であっても思わぬトラブル・エラーに見舞われることはある訳で、そこに目を三角にしてイラついていたらお互い不幸ですよ。

 

もちろん仕事にはスケジュールとか期限があるので程度の問題はあるけど、その辺のバッファというか、フォルトトレランスみたいなものを最初から組み込んでおく必要があるんでしょう。

 

というか、そこに理解が至るのが遅いわ俺。

ICH E17を読む:2.2.1 有効性及び安全性の地域間のばらつきとその影響に関する事前検討事項

地域間である治療薬の効果がばらつくことは致し方ないことですが、それを加味して国際共同治験を計画してください、ということですね。

 

ばらつきの要因の分類としては、E5ガイドラインと同じく

  • 内因性要因(遺伝・生理学的な要因)
  • 外因性要因(環境・地理的な要因)

としています。また、開発早期のデータを使ってこのあたりのことを検討することを勧めていますね。

一方で、評価基準や医療習慣など、共通化できるところは試験計画で標準化し、系統的に治療効果が地域間で食い違う可能性を減らす努力を求めています。

それでも地域間で治療効果がばらつく場合、それは「地域」というより他の内因性・外因性要因の分布が地域間で異なる可能性が示唆されており、国際共同治験計画時に探ることを推奨しています。

 

(できるだけup-to-dateな)データを使って検討する、と簡単にいうのですが、あまりにサイズの小さいデータだと正しい検討はできないと思うのですよね。仮に「それらしい、治療効果をばらつかせそうな要因」が分かったとして、それを層別因子なり統計モデルの共変量に含めたとして、必ず治療効果の推定精度が上がるとは限らず、誤った層別はかえってバイアスを生じさせる可能性もあります。

 

一般に、疫学では共変量をデータ解析「だけ」で選ぶことは戒めており、やはり疾患領域の知識を重視することを勧めています。そうなると、データというより、医学的な知見をDAGなどで定性的に評価し、治験で実際に考慮する層別因子を選ぶ、というアプローチの方が健全なんではないかと思います。

 

ICH E17を読む:2.1.3 規制当局との相談

国際共同治験に関して、申請者が規制当局と相談するのは今や一般的なプロセスで、「治験やった後で問題が出ても知らんよ」という話でしょう。

 

一般的に、最近は相談しても「結果次第」みたいな結論も多く、相談の意味とは…?と思わされることもありますが、国際共同治験に関して言えば、それが議論の中心となることは多くないという理解です。稀に見られるケースは、地域によって承認要件、というか検証すべき仮説に違いがあり、地域ごとに主解析が違う、といった内容ですがこれは本当に限られたケース。

 

あ、ありました、そのような議論が中心になる地域。その名はにほry…